『思い出屋』へようこそ。

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 思音はしばらくおばあさんを眺めてから、いつまでも立ってばかりにもいかないことに気づいて仕方なくお店の前まで歩いていった。 「こんにちは」 「……あら」  通り過ぎる時に声をかけると、初めておばあさんは顔を上げた。  眼鏡の向こうの目は優しく、皺だらけの顔にも柔和な表情が浮かんでいる。 「こんにちは。こんな暗いのにお客様なんて、珍しいわね」 「え? あ、いや、私は商店街に____」  どうやら勘違いさせてしまったらしい。お金は持っているものの迂闊に知らないお店に入るわけにはいかず、急いで訂正したが、おばあさんは嬉しそうににっこりと微笑むばかりだ。 「こんな暗いのに外を歩いてたら危ないわよ。中はあったかいから、そこで休みなさい」  そう言って、曲がった腰でお店の中に入っていく。ここで無視して歩いて行ってしまうのは申し訳ない。  優しそうだったし、お店の中に入ってから誤解を解けば分かってくれるだろう……と思った思音は、おばあさんに続いてお店の中へ入っていった。
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