『思い出屋』へようこそ。

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「お金いらない!? え、じゃあ何をとるんですか?」 「何をとるって言われても、別に何も。私はねぇ、自分の仕事ができればそれでいいの」 「……ここ何屋さんなんですか?」  おばあさんの笑顔に対し、気になっていたことを訊く思音。おばあさんは嬉しそうな表情で、 「『思い出屋』看板にも書いてあるわ。なくしちゃった思い出を、思い出させてあげるの」 「はぁ」  なんともリアクションに困る返答を頂戴した。おばあさんが心理学に通じているとかいうわけでもなさそうだが、まさかボケているなんてことはないでしょうね……と思音は困惑する。 「頭は忘れていても、心は忘れない。思い出ってそういうものだから素敵なの。私は心の中を見てあげて、お客様が忘れた思い出を探すのよ」  いかにも怪しい占い師が言いそうなセリフが飛び出したが、この穏やかな顔をしたおばあさんに居心地のいい店内で言われるのとでは信頼度が全く違う。 「……でも私、何も忘れてませんよ?」 「忘れてないなら、お母さんを嫌いになんてなりはしないでしょう」  サラリと心を見透かすようなことを言われ、思音の警戒が一瞬で固くなった。
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