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しかし皆が、しばらく沈黙を喫しているのが気になった僕は、徐に顔を上げる。すると全員が呆然と黒板の方を見ていた。それにつられて目を向けると……驚くことに、そこには何も無かった。町田が消えていたのだ。血だまりも何もない。僕は唖然として、何ら変哲のない黒板を見つめながら「どう、なってるのこれ……」と声を漏らした。啓介も同様で「消えた……どうなってんだ」と理解に苦しんでいる様子。
消えた、とはどういうことだろうか。僕の頭にはここが普通の場所じゃない、という考察しか浮かばず。これは夢なのか? でもあの感じ、到底そんなふうには思えない。どうなってるんだいったい。
しかし、これでここから出られるわけか……後味こそなんとも悪いが、仕組んだ本人の責任ではあるのだ……仕方ないだろう。僕はこじつけて、タップをして殺したという感覚を逃がそうとした。
そして悲劇の終焉を告げる様にカタン……と、青山がスマホを机に放った音が響く。
「……んだよ畜生が。ひでぇもん見せられたなクソ」
「あぁでも、あれっしょ……自業自得だし。だってあいつのせいで、こうなったんだからさ。ってか、これで出れるじゃん? はぁぁ……マジで変に疲れたわ」
そう言う荏田の顔は、まるで苦手なゲテモノを食べた後の様に歪んでいた。きっと僕も、こんな顔をしているだろう……なんとなくわかる。しかし、嫌な予想はしていたものの、まさかここまで酷い処刑内容だったとは……町田は本当に死んだのだろうか。
するとノイズが聞こえてきた。放送が始まるようだ。
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