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#06 ふたりの時間
自分の行動力に、自分で驚いた。
まるで家猫みたいに安全圏で暮らしていた僕が、公共交通機関を使い地図をたよりに公園を目指すなんて。というか目指せたことが。
*
僕は瀬尾さんに嘘をついた。
秋夫の仕事の関係でしばらくこの付近に立ち寄ることになったと。
――秋夫を待っている間、瀬尾さんの暇つぶしの相手をさせてくれないかな
前日と同じベンチに座っていた瀬尾さんに恐る恐る声を掛ける前から、僕は秋夫をダシに使おうと決めていた。
我ながら姑息だと思う。
けれど尤もらしい大義名分がなければ警戒されることは分かっていたし、「友達」になる方法はこれしか思いつかなかった。
その日から続けて毎日、ほぼ同じ時刻に公園へ行った。タイミングとしては秋夫が仕事に出掛けた一時間後だ。
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