1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前阿保だろ、宇宙人か。」
その言葉に俺はムッとした。
確かに俺の頭は、人類平均並みにはない。テストをすれば赤点ばかり、放課後は先生とマンツーマンの補習の常習犯だ。つまり頭が悪いのだ。だからいって宇宙人に疑われる程、あんぽんたんではない。
「なんだって、眼鏡君。君は確かに頭がいいのかもしれない。先生の代わりに補習を任せられるほどだ。でもな、言って良いことと悪いこともわからないようじゃ、君は将来犯罪者だね。」
俺は怒りぷんぷんで頬を膨らませながら、眼鏡君に抗議した。だが眼鏡君の顔はすまし顔。
(…腹立つその顔、このテスト用紙で紙飛行機作って、その顔に飛ばしてあげようか)
「宇宙人に言われたくないわ。テストの結果見てみれば、科学の解答に、線香だけでいいのに何で蚊取り線香って書くんだよ。蚊取りは要らねぇよ。どうやったらあんな、くるくるした蚊取り線香が試験管に入るんだよ。ホントところどころ阿保解答多いし、マジで宇宙人だろ、お前。」
また、宇宙人って言った。しかも今度は2回も言った。もうこれは訴訟問題だ。俺は断固として眼鏡君を許さないぞ。
「いいかい、眼鏡君。蚊取り線香は確かにくるくるしている。でもだ。機能として考えるんだ。線香も蚊取り線香も大して変わりはしないだろ。くそ、なのにあの白衣教師め。バツつけやがって。
…ごほんごほん。まぁそれは置いとくとしようじゃないか。君は僕が憎いのか。僕を阿保呼ばわりしてきたり、しまいには宇宙人呼ばわりだ。心外だ。いくら凪のような僕の心も君のせいで大荒れだぞ。もうこれは責任をとってもらうぞ。」
俺は、自分でも何の責任なのか全くわからなくなってきた。普段から並大抵では怒らない俺の心をブロークンさせた輩を懲らしめたい一方で言った言葉だ。
「責任ねぇ。そうかそうか。お前はそんなに責任をとってもらいたいか。さっきから俺を眼鏡君呼ばわりしてくるお前と大差変わらないと思うが、責任ねぇ。
…わかった。放課後、毎日教室にいろよ阿保宇宙人。俺が責任とって赤点を回避させてやる。特別にだ。先生にも俺から言っておく。泣いて喜べ。学年1位が勉強をみてやるんだ。宇宙人から人間にしてやるよ阿保。」
なんだこれ。そんなの望んでいない。なんだこの俺様眼鏡君は。優等生の皮をかぶった悪魔じゃないか。その悪魔は教室から去ろうとする。
「ちょっちょま、待ってくれ、長谷川君。」
(…ヤバい、悪魔とマンツーマンなんて嫌だ)
眼鏡君もとい、悪魔もとい、長谷川が振り向いた。
「覚悟しとけ、吉良遥。」
俺は絶望で、椅子から崩れ落ちた。その夜熱をだして遥は寝込んだとか。今後長谷川と奇妙な関係になるとか、誰も知る由もない。
最初のコメントを投稿しよう!