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次の瞬間、俺にかかる重力は倍に跳ね上がった。
体中の骨が軋みヒビが入る。いや、何本かは折れたかもしれない。
強い圧迫を受けた毛細血管は血液の循環を止め、俺から視力を奪う。
これから死にいたるまで、もう時間はかからないだろう。
これは虎の尾を踏んだか。
いや、逆鱗に触れたが正しいかもしれん。
あいにくと、触れただけでは致命傷にはできなかったが。
意識が霧散しかける。
だが、それまでかけられた重圧が突如として消えた。
俺を見下ろしていた銀色の顔から、仮面が崩れおちる。
そこから輝かんばかりの美少女の顔が現れる。
それまでに見たことのないような泣き顔で。
「だって、だってしょうがないじゃない」
ボロボロと宝石のような涙をこぼす美少女。
「あなたたちが、あんなにも貧弱だなんて知らなかったんだもん」
まるで子供の言い訳だ。
だが、これで初対面時に、美少女が俺の身体に触れようとはせず、的外れな視認だけで命の様子を探ろうとした理由が確定した。
要するに、連中は人間の命というものが、どこまで持つものなのかよくわかってないのだ。
だから、おっかなびっくりの行動になる。
相互理解にはまるでとどいていない。
まぁ、たぶん、これまでは一方的に観察してきただけだったので、いざ接触ってときに事故が起きたのだろうな。
ひょっとしたら、いま目の前にいる美少女がそれを起こした本人で、リーダーと呼ばれる人物が被害者ってのは、俺の想像でしかないけど。
「とりあえずさ……」
美少女の話が一段落すると、俺は息も絶え絶えにお願いする。
「了承するわ」
不意に受けた投了に、美少女はポカンとする。
「だからさ、この状態は非常に辛いのでそのレトロな形の光線銃でとどめをさしてくれってことだ」
だいたいさ……
この世に女の子の泣き顔を見続ける以上の拷問なんてありゃしないだろ。
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