彼女が空からやってくる

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「ちがいますよ。『ノー』ではなく『イエス』って言ってください」  美少女はグリスで彩られた唇をとがらせると、まるで俺がまちがっているかのように注意する。 「ちがってない!  俺は死にたくないんだ!  だから答えは『ノー』でただしい!!」  必死にこちらの意志を理解してくれと訴える。 「あの、篠崎一歩さんでまちがいないですよね?」 「ああそうだ」  彼女の確認にそう答える。 「未成年であるにも関わらず、自宅のパソコンのHDDに所有してはいけないタイプのゲームでいっぱいな」 「それは……きっと、人ちがいだな。うん」  友人ですら知らないような情報に、俺は目をそらして答える。 「いえ、まちがうハズはありません」  そう前置きすると光線銃を手品のように消すと、スマホくらいの半透明なプレートをこれまた手品のように出現させる。  そしてプレートを可憐な指先でなぞり、その表面をピカピカと光らせる。すると俺のすぐそばに等身大の俺が現れた。  最新の3D投影機なのだろうか。向こうが若干透けてみえる以外、毎朝鏡でみる俺と変わらぬ姿の俺が立っている。  まるで鏡でも置かれたかのように精巧な映像。  これはさすがに言い訳ができない。  吟味するように俺と虚像を比べた美少女は、自信満々に言ってのける。 「ほら、このとおり髪の毛の本数が同じじゃないですか」 「そこで見分けてんのかよ!」 「とにかく! これであなたが篠崎一歩さんであることが証明されたのです」  腕組みをした美少女は誇るように言う。 「あなたは自分が篠崎一歩さんであることを理解しましたね?」 「ああ」  これ以上は言い逃れできないとふんだ俺は渋々と認める。 「だったら、決まりですね。いますぐ、このムーベで撃たれて死んでください」  そう言ってプレートを操作すると俺の映像が消え、再び光線銃が現れる。 「だから、それは嫌だって」  俺の答えに、今度は美少女が声をはりあげる番となった。
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