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「篠崎一歩さん」
子供のような甲高く、それでいて肌触りのよい絹糸のよな声が俺を呼びとめた。
瞬時に、美少女から声をかけられそのままラブい展開に発展する……なんて、アニメチックな想像が脳裏をかけめぐる。
土手沿いの散歩道には誰もいないし、フルネームで呼んでいる以上、人ちがいでしたなんてオチもありえない。
その上で、美少女(まだ確認してないけど)から声をかけられるということは、もう今後の展開はみえたも同然。
そんな思春期まっただなかの男子として当たり前の期待に胸を膨らませつつ振り返ってみるが、そこには誰もいなかった。
「…………え?」
空耳か? それとも幻聴?
そう思いかけたものの、視界の上の方に動く存在に気がつく。
それは雲ひとつない青空を、両手を広げ竹トンボのように旋回する美少女だった。
それも想像以上の……いや、想像外の色彩を放つ超絶美少女だ。
ゆったりした動きとは裏腹に、彼女はあっさりと俺のすぐ近くまでおりてくる。
そして土を固めただけの道に砂煙どころか音も立てずに着地した。
虹色の光彩を帯びた不思議な長髪。
同色の長い睫毛に飾られた大きな瞳。
額からはアンテナを思わせる金属っぽい感じの角。
首から下を覆う銀色のボディースーツは、よっぽど特殊な生地なのか、全裸にペインティングをしてるだけなんじゃないのかと錯覚するほど、美少女の控えめな体型を露わにしている。
天文学的にケタ違いな美少女なのに、すべてが大宇宙的におかしい。
なによりも、大昔のSFアニメにでもでてきそうな光線銃を俺に向けているあたりが特に……。
見とれ、混乱し、やっぱり見とれ直し、可能な限り記憶にとどめておこうとする俺に、美少女はさきほどと変わらぬ甘い声で問いかける。
「ちょっと死んでもらいたいんだけど……いいですよね?」って。
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