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小銃弾で胸を撃たれたのはすぐ分かった。倒れずその場に踏ん張ろうとした時、更に胸や腹に数発の銃弾を受け遂に倒れ伏した。目には怪物と露西亜兵の姿が、耳にはまだ続く惨劇の雄叫びが響いている。胸の鼓動は徐々にゆっくり、ゆっくりとなり、やがて静かにその動きを止めた……。
小金井小隊が潰滅し日本軍陣地の抵抗が終息した頃、前面陣地前方の斜面を露西亜兵の一団がゆっくりと登って来る。
その中の一際長身の男は、稜線上に立つと周囲を見渡し満足気に笑みを浮かべ頷いた。
「大体片付いたな。念の為、周囲を掃討しろ。一人も逃すな。それと……獣化兵どもを集めろ」
「はっ!スミノフ少佐殿」スミノフの傍らに付いていたマスロフ大尉は稜線付近の兵を集めて命令を下した。
「おい、集まれっ!これより二個小隊で掃討戦を行う。稜線付近の他、周辺の陣地まで隈無く掃討しろ」
集めた兵を手早く三隊に分けると、その一隊を率いて斜面を下って行った。
残されたスミノフは、他の兵とは明らかに装備の異なる数人を呼び寄せ、白い息を吐きながら何やら命じている。
「ご苦労、今夜の任務は終わった。獣化兵に解態剤を投与しろ。引き揚げるぞ。但し念の為、一匹だけ残せ。一匹だけは宿営地手前で投与だ。いいな」
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