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そう命令し、陣地内で倒れている日本軍将校の遺体に近づいて体を屈めると、身に付けている雑嚢や外套、軍服のポケット等を弄り始めた。
『なんだ此奴、戦地に来たばかりの新米指揮官か。戦訓を学ぶ事も無く、経験を積む前に死んだか……。ん……少尉風情では大した情報は持っていないな』
スミノフは諦めて立ち上がると、日本軍将校の遺体に挙手の敬礼をした。
それから三十分後、掃討戦を終えた露西亜軍部隊はスミノフの指揮下、戦場を離れ宿営地への帰路に着いた。
この夜の戦闘はこれで終結した――スミノフはそう思ったが、彼の知らない所で状況は変わりつつあった。
惨劇の起きた稜線の、日本軍勢力側に広がる森林地帯をある小部隊が進んでいた。
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