神乃馬

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スミノフ少佐の部隊が日本軍部隊を潰滅させた数時間前の夕刻、日本軍小部隊の宿営地に一通の指令書が伝令によりもたらされた。 それを受領したのは、物静かな雰囲気の中にも精悍な顔付きをした陸軍騎兵大尉の階級章を着けた男――藍原駿夫(あいはらはやお)だった。 届けられた指令書には、露西亜軍特殊部隊に関する情報――此迄の日本軍部隊の損害、少ない生存者から得られた露西亜軍の情報、そして本日、露西亜軍特殊部隊が攻勢に出る公算大である事、最後にこの露西亜軍を捕捉撃滅し、出来れば捕虜を捕る事が記されていた。 藍原はこの指令書を受け取り、今夜の行動計画を練らなければならなかったが、それには幾つかの問題点があった。 まず、露西亜軍が保有している野獣だが、今から半年前にこの野獣と思われる死体一体を収容し、解剖、研究を行いある程度の情報は得られた。しかし、依然として全貌は不明である事。露西亜軍がこの野獣をどれだけ保有しているのか、どう管理してどう操っているのかが不明である事等々。 そしてこの野獣に対して、自分達のが有効なのか、現在の保有数で充分と言えるのか、不確定な要素は枚挙に尽きない。 しかし、下命された以上は行動を起こさねばならない。そして時間的な猶予もない。藍原は行動計画の作成に掛かる為、指揮下の中隊首脳に召集を命じた。
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