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藍原が指令書を受領した十五分後、中隊本部の天幕覆に中隊所属騎兵の准士官以上の面々が揃った。藍原大尉、鶉橋中尉、霞谷曹長、梶本曹長の四名――中隊と言っても准士官以上はこれで全員である。中隊の主力となる二個騎兵小隊の要員全てでも十名しかいない。部隊としての実勢は一個分隊に充たないのだ。それはこの中隊が実験投入される部隊だという事と、この部隊の主要装備の頭数が確保出来ないという事情に因るものだった。
藍原は指令書を一通り読み上げ、今夜の行動計画についての所信を述べた。
「……以上、指令書の命令に従い一七:〇〇宿営地を出撃する。歩兵小隊は宿営地に残留。参加兵力は騎兵のみ。但し、霞谷曹長は残留。今夜、友軍歩兵部隊が展開する地点の内、最も前線に突出する幾つかの陣地に絞って索敵、捕捉する」
藍原が言い終えると同時に、この中の最年少である霞谷曹長が挙手した。藍原は藍原で言い終えると「解散。準備に掛かれ」とこの場を締め括った。
霞谷は再び挙手し、今度は高く良く通る声ではっきりと言った。
「中隊長殿!小官も加えて下さいっ!」
その様子を見て、藍原は憮然と霞谷を見詰めた。この場に居る残り二名――鶉橋中尉と梶本曹長は無言で『またか』という顔色を見せている。
「霞谷曹長!貴様は宿営地に残留だ。抗命は認めない」
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