神乃馬

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この露西亜軍の獣への対抗手段として、陸軍内部――特に監軍部騎兵監の主導で以前から軍用馬への転用を研究していた神乃馬に白羽の矢が立ったのであった。 しかし、神乃馬の繁殖、量産には障害となる要素もあり、その点については今尚改良が続けられていた。 出撃予定時刻、出撃準備を完了した藍原以下、九名の騎兵と九頭の軍馬――神乃馬が中隊本部の天幕覆(テント)前に整列していた。 藍原が訓示の為、八名の騎兵の前に立つ。 「中隊長殿に敬礼っ!頭、中っ!」鶉橋中尉の号令が掛かり、全員が藍原に敬礼する。 藍原の答礼の後、鶉橋の「直れっ」の命で十六の眼が藍原に注がれる。 「これより友軍最前線に移動する。中隊の行動目的は正体不明の敵軍獣兵の索敵、捕捉である。出来得れば捕獲せよ。其れが出来ない場合はこれを撃滅せよ。以上、総員騎乗っ!」 藍原の号令で、各騎兵は傍らの各々の軍馬に「伏せ」を命じた。神乃馬はニ百センチを越える体高の為、そのままでは騎乗出来ない、故に「伏せ」を覚えさせる。「伏せ」を命じると前肢を伸ばし、騎乗者が乗れる高さ迄腰を沈めて来る。 そうして全員が騎乗すると立ち上がり、気を付けの姿勢を取った。 「中隊行軍隊形っ!一列縦隊!常歩※1、進めっ!」藍原の号令で中隊は行軍を開始した。 ※1常歩(なみあし):馬の歩様(歩き方)の一つ
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