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塹壕掘りを終え、一息入れていた歩兵達は背後に何かの気配を感じ振り返った。そして突如現れた巨大な生物に、或る者は息を呑み、或る者は驚きの悲鳴を上げた。
従隊の前衛に位置していた草薙軍曹が前に進み、過不足の無い声量で歩兵達に問い掛けた。
「心配するな。我々は友軍騎兵だ。此処の指揮官は何処に居られるか」
草薙の問いに、この場所の最先任である伍長の階級章を着けた、如何にも古参下士らしい厳めしい顔立の男が答えた。
「この先だが、小隊長殿に報告してから案内する。その場で待たれたい。貴官等の官姓名と所属、指揮官の名を伺いたい」
草薙とその伍長の遣り取りを従隊中央で聞いていた藍原は、二人の前迄馬を進めた。藍原の騎乗する神乃馬――青流鬼の鼻先から、既に冷え始めた空気の為呼気が白く棚引いている。
「我々は特別襲撃騎兵独立第百一中隊だ。俺は指揮官の藍原大尉だ」
大尉と言う階級を聞くと、歩兵伍長は踵を合わせて敬礼をした。
「失礼致しましたっ。直ぐに陣地指揮官――小隊長殿に報告致します」
そう言うと傍らの若い兵卒を向き「おい、小隊長殿に伝令だ。友軍騎兵部隊来訪す、だ。行け」荒々しい口調で命じる。
告げられた兵卒は慌ただしく、尻を叩かれる様に塹壕を飛び出して小隊本部に駈けて行った。
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