特襲騎兵、西へ

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数分後、先程の兵卒は駆け足で戻って来ると、息を整えながら報告をした。 「小隊長殿より、小隊本部にお越し下さいとの事であります」 その後、藍原以下九名の騎兵は報告に走った兵卒の先導で監視哨陣地の本部塹壕に辿り着いた。 塹壕内に目を凝らしていると、部下の下士官に命令を伝達していた男が顎髭を蓄えた顔を向ける。 「小官は歩兵第三十四連隊第三大隊第四中隊第三小隊、大沼少尉であります。大尉殿」 草臥(くたび)れた階級章と同じく年季の入った風体の男は、藍原に戦地臭い敬礼をして見せた。彼の風貌から藍原の様な士官学校出身ではない、予備士官である事が分かる。藍原は男のそれとは対照的な端正な答礼を鞍上から返した。 「任務ご苦労。独立第百一中隊、藍原だ。大沼少尉、何か変わった事はないか?此処だけでなく、隣接する陣地からの情報も含めて何か聞いているか?」 大沼は聞き慣れない部隊名を耳にして(いぶか)しく思いながら「はい、今の所は何も異状はありません」そのままの姿勢で答えた。そして意を決した様に鞍上の藍原を見上げた。 「大尉殿、露軍に何か動きがあるのでしょうか?」 「露軍の特殊部隊による夜襲が頻発している。我々はその警戒に当たっている。それ以上は訊くな」憮然と答える藍原に大沼は更に言葉を続けた。
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