追撃戦

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伊藤一等卒を惨劇現場に降ろして友軍の後を追い続けていた霞谷は、漸く戦闘真最中の戦場にギリギリのタイミングで間に合った。戦場に到着した霞谷が最初に見たのは、まさに今、藍原を狙撃しようとする露西亜軍将校の姿だった。 その背後に斬り掛かると、露西亜軍将校は振り返り両手で小銃を握り霞谷の斬撃を受け止めようと構えた。 しかし、霞谷の振り降ろした斬獣刀の斬撃は、露西亜軍将校の思惑と共に彼の構える小銃を銃身ごと真っ二つに斬り伏した。 小銃を真っ二つにした凄まじい斬撃を目の当たりにして、自分に勝目が無い事を悟ったマスロフは茂みに転がり込んだ。丁度其所にはマスロフと同じ様に、日本軍騎兵から何とか逃れた数名の歩兵達が身を寄せる様に隠れていた。彼は其の部下達を纏めると、間道上に展開する迫撃砲部隊に合同する為、日本軍騎兵から身を隠して大きく迂回路を取った。 一方、マスロフを撃退した霞谷は、藍原と格闘をしている露軍獣兵を見て息を呑んだ。 『あれが露軍の獣兵……』霞谷は大きく一つ深呼吸をすると藍原に加勢する為、露軍獣兵に向けて駈け出し突撃に移った。 其の時、藍原は獣化兵の殴打を(かわ)す、また受けては跳ね退ける、といった具合に激しい獣化兵の攻撃に対し防戦に徹していた。
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