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「霞谷っ!貴様、何故此処に居るかっ?!」藍原が声を荒げた。
霞谷は藍原を振り返り僅かに口許を緩めた。
「中隊長殿っ、小官も中隊の一員です。それに特襲騎兵の任務は、露軍獣兵撃滅ではありませんか!抗命の罪は負いますが、今は加勢させて下さい!」
「お前なぁ!勝手な事はするなと言ってるだろうが!大体、お前に何かあったら親父殿になんて言うか……」
其所まで言い掛けた所で、体勢を立て直した獣化兵が二人に襲い掛かろうと間近迄迫る。二人の間を割る様に鋭い爪を振り下ろすと青流鬼と黒三月 が同時に左右に横跳びして寸前で躱した。
「ええい!兎に角、此奴を何とかするぞ!俺が正面から引き付ける。その間に後ろから殺れ!首を落とせ!」
藍原は獣化兵の正面に青流鬼の鼻先を向けると、斬獣刀――その長刀の切先を獣化兵に向けた。月明かりの下、黒光りする斬獣刀に白い刃文が浮かび上がる。
切先を向けられた獣化兵は、鋭く大きな爪を持つ両手を、握り締める様に閉じるとまた大きく開くのを繰り返し、藍原を見定める様に濁った眼を細めて、ジリジリと間合いを詰めて来る。
獣化兵が藍原を攻撃の間合いに捉え様とした――まさに其の瞬間、獣化兵を霞谷と黒三月が後背から襲った。
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