追撃戦

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獣化兵の背後で踏み切った霞谷と黒三月(くろみつき) は放物線を描き迫る。 霞谷は藍原が言った様に獣化兵の首を落とすつもりだった。しかし、獣化兵の硬く太い首を一刀で落とす事は難しい。それ故自分と黒三月(くろみつき)の全体重を掛けて獣化兵の首をへし斬る――それが霞谷の出した攻撃法だった。 放物線の頂点から落下速度を増し、獣化兵の背後に迫る霞谷の頬を凍てつく風が撫でる。斬獣刀を握り締め構えて、獣化兵の首迄あと僅かという時、獣化兵が体勢を変え此方を振り返った――。 獣化兵は上体を捻り、右腕で藍原を牽制しながら左腕で霞谷を振り払おうと此方に繰り出して来る。 『くっ!気付かれたか。このままでは首を落とせない』霞谷は首を狙って真横に構えていた斬獣刀を構え直して立てた。 其の直後、霞谷を振り払おうと横に薙ぎった獣化兵の腕は僅かにタイミングを外し空を切った。殴打し損ねた獣化兵は、透かさず薙った腕を目の前に(かざ)して防御体勢を取る。 『斬れるものなら斬ってみろ、か……太刀を通さない自信が有るのか?ならば……』 霞谷は斬獣刀の黒光りする刀身に全体重を乗せ、獣化兵の前腕に打ち込んだ。斬獣刀が白い刃文を(なび)かせる様に獣化兵の蒼白い被毛に食い込む――。 「ええぇぇぃぃ!やあぁぁあっ!」獣化兵の腕を落とす――その決意の叫びを上げながら打ち込んだ斬獣刀に更なる力を込めた。
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