追撃戦

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其の見詰める先――露軍撤退方向の間道上にはマスロフが号笛を手に立っていた。 マスロフは辛うじて霞谷達、日本軍騎兵の逆襲から逃れ、部下達を纏めると間道上の迫撃砲分隊と合同を果たしていたのだった。 マスロフが再び号笛の長音一声を吹くと、獣化兵は霞谷達を一瞥した後、間道を三足で駈け出した。 そして、獣化兵が此方に向かって来るのを確かめたマスロフは怒声を発した――。 「迫撃砲分隊、攻撃始めっ!撃てぃっ!」 マスロフの号令で迫撃砲分隊の迫撃砲二門が一斉に砲弾を放った。砲弾は迫撃砲特有の高い弾道を描き、最頂点に達すると落下に転じて緩やかな放物線を滑る様に地上の目標目掛けて降り注いだ。 砲弾の信管が地面に接触した瞬間、爆発音と言う新たなが加わり、周囲に砲撃の破片と凍土の欠片が飛び散る。 マスロフは此方に来る獣化兵と霞谷達、日本軍騎兵の中間地点に砲撃を加えた。其の意図は日本軍騎兵の追撃を足止めして、速やかに撤退する事にあった。 間道上に残った霞谷と藍原は、獣化兵の追撃に移ったが、遠ざかる獣化兵の後を追従する如く落下する砲弾を前に踏み止まるを得なかった。 「糞っ!霞谷!追撃止めっ!!」 「しかし、中隊長殿、敵を逃すのは……」 「馬鹿者っ、命令に従え!」
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