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Scene.01 魔界の果てからこんばんは
――ひらがな市
空から一筋の光が漏れる。
その光から重い音が鳴り響く。
そこに立っていたのは一人の男。
男の名前は、ブリ男。
魔界ブリタニ国のサラリーマンだ。
ブリ男は、静かに街を眺める。
「何と言うか……
きらびやかな街ですねぇー」
ブリ男は、そう言ってメガネを上にあげる。
「おい。
おっさん!」
そんなブリ男にひとりの若い男が声をかけてくる。
ブリ男は、自分はおっさんではないので無視して歩く。
「おい聞いてんのか?
おっさん!」
若い男は、ブリ男の肩を掴んだ。
「おっさんってもしかして、僕のことですか?」
ブリ男が、そう言って若い男の腕をつかむ。
「お前以外に――」
若い男が、そこまで言ったとき悲鳴が響く。
爆発音と共に怪人が現れる。
怪人は、ブリ男の方を見るとニヤリと笑い攻撃を仕掛けてきた。
ブリ男は、その攻撃を避ける。
若い男はその際に掴んだ腕でそのまま誰もいない方向に投げる。
悲鳴をあげて若い男は、そのまま逃げていった。
逃げたのは、若い男だけではない。
その場にいた人間全てが逃げる。
ただひとり、ただひとり、ただひとりの少女を除いて……
少女は、震えながらもモップを持って構える。
「またお前か……」
怪人は、そう言って少女の方に一歩、また一歩と近づく。
「私は、逃げない……
貴方のような人からみんなを護りたいから!」
少女の体が震えている。
「今日のオイラは、苛立っているんだ。
今日こそは殺しちゃおうかなぁー」
怪人が、ケラケラと笑う。
「私を殺したら、もうほかの人を傷つけませんか?」
少女がそう言うと怪人が笑う。
「はぁ?
何言っているんだ?
お前ひとり殺したところで気が済むかよ!
オイラは、もう何人も殺しているんだ。
お前ひとり殺したところでそんなのノーカンさ!」
怪人が、そう言って銃口を少女に向ける。
少女は、死を覚悟した。
「ところでお嬢さん。
お名前は?」
少女の前にブリ男が立つ。
「え?」
少女は、目を丸くさせて驚いている。
「名前は?」
ブリ男が、再び尋ねる。
「伊藤 早良(いとう さわら)……」
「早良さんですね。
貴方、魔法少女になりませんか?」
「貴方何者ですか?」
「なんだかんだと聞かれたら?
答えてあげるが世の情け、世界の破滅をふせぐため世界の平和を守るため愛と真実の悪を貫く魔界の果てからこんばんは。
私、魔界ブリタニ王国営業部平社員のブリ男と申します」
ブリ男は、そう言って白い歯を見せた。
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