「デート」

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 自分の気持ちにめちゃくちゃ戸惑いながら、今度は流れるプールに、快斗と一緒に浮かぶ。  プカプカ浮かびながら、進んでると、不意に、快斗がオレを見た。 「ここらへん、だよな、愁が沈んだの」 「……そうだっけ?」  きょろ、と見回すけど。正直、全然覚えていない。 「ここで沈んで、おばさんたちが、あっちに座っててさ……でもオレ、正直よく覚えてないんだよね。パニックすぎてさ――――……愁が沈んでから、なんか……助けを呼んだような気もするけど……でも愁が目の前で起き上がったとこまで、なんか、記憶が飛んでて」 「え、そうなの?? オレは、沈んだから記憶ないけど。快斗は覚えてるんだと思ってた」  快斗は首を振って苦笑い。 「うーん……愁が沈んだってショックと、愁が起き上がった所で泣いたのは、覚えてる」 「――――……あ、ずっと、泣いてたんじゃないの?」 「……わかんねぇ。泣いてたのかもしれないけど……愁が、起き上がってから、すごく大泣きしたのは覚えてる」 「……そうなんだ。なんか思ってたのと違うかも」 「この話、ちゃんとしたこと無かったもんな」 「うん。母さんには毎年言われるけどね」  二人で苦笑しながら、顔を見合わせる。 「……愁が居なくなるかもってほんと怖かったから思い出したくなかったし。オレ、すげえ泣いててカッコ悪いし。話したくなかったのかも」  快斗は、そんな風に言って、ふ、と笑ってる。 「でもオレ、快斗が大泣きしてたの、覚えてるよ? 」 「忘れろよ」 「だって貴重なんだもん。忘れられないよー」 「貴重じゃないって――――……あー、でも……オレ、母さんにも言われる気がする」 「ん?」 「快斗が大泣きしたの覚えてるのはあの時だって。オレ、物心ついた頃から、あんま泣かない奴だったからさ」 「……ありがと、そんなに泣いてくれて」  クスクス笑ってしまうと。  快斗は思い切り苦笑いしてから、ふと、微笑んで。 「それ言うと、愁はよく泣いてたもんな。どれが特別とか、ないよな」 「あー……うん、オレは、いつもだったかも……ごめんね」  ご迷惑いっぱいお掛けしました、と思いながら、そう言うと。 「全然いい。可愛かったから」  クスクス笑う快斗の顔、じっと見つめてしまう。 「面倒くさいなって思ったでしょ?」 「思ってたら近くに居ないし」 「全然思わなかった?」 「思う訳ないじゃん。可愛いって思ってんのに」  プールは騒がしくて。  多分すぐ近くに居て話してるオレ達の会話は、他の人には聞こえないだろうとは思うのだけれど。  ……なんか。あんまり可愛いて、連呼されると。  とっても恥ずかしいけど。  ……あーやっぱり、オレ。  …………ちょっと嬉しいのかも。  快斗に、面倒くさいって思われてなかった事、とか。  ……可愛いって思ってたって。こんなにまっすぐ言われる事、とか。    ……ちょっとじゃなくて。  すごく。  嬉しいのかも。 「……可愛いって言われるの、嫌?」 「え?」 「男に可愛いっていうなって、思う、なら――――……別の言い方、考えるけど」  ふ、と笑んで快斗が言う。 「――――……」  えっと。  ……可愛いって言われるの嬉しいから、可愛いって言ってって??  とてもじゃないけど……い、言えないぞ。  そう思って、固まって、流されていたら。  快斗が、ぷ、と笑った。 「言っていいなら、このまま言う」  クスクス笑う快斗に、否定できないイコール、その通りって事で。  かなりハズイ……。
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