「デート」

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「……快斗ってよく覚えてるね、昔のこと」 「んー……どうだろ」  少し考えてから、快斗は、クスッと笑った。 「もちろん全部は覚えてないけど、所々は覚えててさ。……そういう記憶の、大事なとこ全部に、愁が居るんだよね、オレ」 「――――……」  そんな風に言われると――――……。  オレの記憶にも、全部、快斗が居るけど。 「まあだからさ。 ――――……快斗、モテるのになんで、とか」 「――――……」 「そろそろ、そう言うの、考えないでくれると良いなと思うんだけど」  にこ、と笑う快斗。 「――――……」  ……ほんと、いつも。  いつもずっと、優しい顔で、見る。オレのこと。  LikeとLove、なんていうそんな告白をされるまでは、ただ友達で仲良しだからだと、普通に、受け取ってきた。  それに意味があったのかと、思うと。  何だか不思議でしょうがないけど。  ――――……オレの好意は。  LikeとLove。どっちなんだろ。  キス。……してもいいとか。したいとか。  何されてもいいとか。  ……あれは。  Loveって言っちゃって、いいのかな。  色々話して、自分の気持ちを考えながら。  二人で、ウォータースライダーにやってきた。結構並んだけど、あと少しでオレ達の番。 「愁、一緒に滑ろ?」 「うん」  ――――……ちょっとカップルみたいって思ったけど。  でも男同士で滑ってる人達も居たし、いっか、と思って、頷いた。  のだけれど。 「愁、前すわって、オレ後ろ行く」  言われるままに座って。  そこまでは良かった。のだけれど。  どうぞと言われて、先に座ってたオレの後ろに快斗が座って。  後ろから、なんか抱きかかえられるみたいな。おなかに手が回ってきて。  どきっと、勝手に心臓が大きく震えた。 「はいどーぞー」  言われて、快斗に押されて、一緒に滑りだす。  ぎゅうっと抱き締められて。  滑る怖さよりも。  裸の快斗に抱き締められて密着して、ていうか、こんな健全なはずの遊びで、めちゃくちゃドキドキしてる事の方が大事件。  ザッパーンと、二人分の大きな音と水しぶきを上げて、プールに落ちて。  快斗が「結構すごかったな」と笑った。  正直、違う事が気になりすぎて。  全然、滑り台。怖くなかったオレは、  「うん」  とだけ頷いて。  ちょっと恥ずかしくて顔を逸らしてたら。 「何? そんな怖かった?」  て、勘違いされて。クスクス笑われてしまった。  
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