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突然ですが、
あたし、梅田 日和の
トレードマークは、
三つ編み。
あたし、少し癖ッ毛
なんだよね。
どうにかこれを
楽に!!早く!!!
いい感じにみせるには
どうしたらいいか
悩んだ結果、ゆるい
三つ編みが最適だった。
毎朝せっせと三つ編みを
結んで、編み目を軽~く
ほぐせば、ゆるっとした
ガーリーな三つ編み完成。
ゴムをしばったとこには
可愛いリボンでちょうちょ
結びを作って、
あとはちょっとメイク
して制服をいい感じに
着こなしとけば、
さっきまで寝癖爆発の
目も当てられない生物
だったのが、
華の女子高生に変身、
というか変化というか、
もう擬態って表現で
いいんじゃないでしょうか。
華の女子高生に擬態する、
こっちの方がしっくり。
今日もいつもどおり
あたしは三つ編みを結って、
リビングに出た。
「おはよう。」
「おはよう、ひよ。
朝ごはん早く
食べちゃいなさい。」
この母さんとの会話も
いつもどおり。
あたしは「はーい。」と
返事をしてテーブルへ。
そこには先に座って朝食を
食べてるヤツがいた。
「・・・・はよ。」
「はよ。」
これ、あたしの兄貴。
梅田 諒。
(うめだ りょう)
大学3年生であたしの
5つ上。
呼びつけるときは、
「ねえ、」「ちょっと、」
の2パターンで名前なんて
とんと呼んでない。
「お兄ちゃんっ!」は
口が腐る気がしてもはや
あたしの中では死語。
あたしは席につくと、
兄貴の方をチラリとみた。
「ねえ、そこにある
バターとって。」
「自分で取れよ。」
日経新聞を読む兄貴、
あたしの方はまったく
見ずにこんなことを
言い返してきました。
これだからコイツとは
口をききたくない。
あたしは座った椅子から
腰を浮かせて腕を伸ばすと
バターのケースを掴んで
また座る。
兄貴はそんなあたしを
見て、フフンッと笑った。
かっわいくない。
兄貴の方が朝ごはんを
早く食べ終わって、
あたしはトーストと
ヨーグルトをバクバク。
さて、歯みがきしよう、
と洗面台に向かったら
兄貴が洗面台を占領してた。
「ちょっとどいてっ、
歯みがきするの、」
「やだ。」
うるさいわ。
兄貴は癖ッ毛に対する
当て付けなのか、
直毛の髪にわざわざ
パーマをかけてふわっと
癖をつけてて、それを
ワックスでセットしてる。
邪魔!
「どいてよ、そんなに
セットしたって誰も
見ないよ、」
「ひよの可愛い子ぶった
その三つ編みもな?」
兄貴はこういうと、
ワックスのついていた
方の手で、あたしの
前髪をぐっしゃぐしゃに
してきた。
荒れ狂う前髪。
「ちょ!
っていうか臭っ、
ワックス臭っ!!」
「臭くねーよ、
ワックスに謝れ。」
兄貴はヘッと笑うと、
余裕綽々で洗面台を
出ていった。
ワックスに謝れって何。
こうして歯みがきに
前髪の修正という余計な
用事まで一気にこなして、
準備完了。
鞄をもって、
ローファーを履いて、
自転車の鍵をもって、
行ってきます。
玄関の扉を開けば、
今日もまた、いつも通りの
1日が始まるのです。
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