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2日後、1人で写真の学習塾へ向かった。
家から電車で一駅、わりと近い。
今日も朝から旦那にイラッとした。
淹れてあるのにカップに注ぐのさえめんどくさがる旦那に、ついキレそうになったけど。
➖いいもんね、今日は神田さんと会ってくるもんね➖
まるでデートのように自分にそう言い聞かせて、気持ちを鎮めた。
駅から少し歩いて写真の学習塾を見つけた。中を覗いてみたけど、まだ始まっていないようだ。
学校が終わってからの時間に始まるんだったと思い出した。
交差点にある5階建てビルの2階が学習塾。
そのちょうど反対側の角にカフェを見つけた。
➖ここでしばらく待ってみるかな?➖
もともと1人でもカフェに入るのは好きだし、散歩も好きだから今度は歩いてこようかな?なんて考えている。
➖今度って、あるのかな?➖
何も進展がなければもうここに来ることはないのに。
今はまだ午後2時を過ぎたあたり。
窓際の席に座ってラテを注文する。
「学習塾に到着!でもまだそれらしき人は来ていません。とりあえず向かいのカフェで待ってみます」
グループLINEにコメントしておく。
ぴこん♪
『神田さんだといいね!』
由実子。
ぴこん♪
『張り込みご苦労様笑』
詩織。
張り込みって。
スマホを閉じて、学習塾が入ってるビルを見た。
両隣にもいわゆる雑居ビルがある。
上の方にかかげられた看板を見ると、なんだか少し怪しい雰囲気のものもあった。
株式会社とは書いてあるけど、どう見ても消費者金融みたいなやつや、猫耳をつけた二次元の女の子のピンク色の看板。
つぶれてそうな飲み屋の看板に、宅配ピザの看板。
学生が勉強する環境としてはあまりよくない気もするのだけど。
「ん?」
学習塾のビルの右隣のビルに、モノトーンのモダンな看板が見えた。
➖なんて書いてあるんだろ?➖
スマホを出してズームする。
【studio W】スタジオW?
「ん?あれ?」
ちょうどそのビルの入り口に人影が見えた。
➖誰だっけ?えっと、あれ?➖
確かに見覚えがあるんだけど、出てこない。
➖知ってる人だ、知ってる女の人、あーもうっ!➖
カシャ!写真を撮ってグループにLINEする。
「この人、誰だっけ?思い出せない、でも知ってる人だよね?」
ぴこん♪
『んー?写真だとわかりにくいけど。あ、この和服姿は、ほら、素子さんじゃない?』
藍子の返信コメント。
「あ、そうだ!【ゆらぎ】の女将さんだ!」
思い出せてスッキリした。
ぴこん♪
『それがどうしたの?』
「学習塾の隣のビルに入って行ったの、すごい偶然!」
ぴこん♪
『隣って?』
「オシャレな看板のね、【studio W】っていうお店かなぁ?そこに入って行ったみたい」
ぴこん♪
『ホント?ホントに?』
由実子。
「多分ね、そう見えたよ」
ぴこん♪
『その【studio W】って、AV撮ってるとこだよ』
由実子。
「えぇーっ!!」
LINEするつもりが思わず声を上げてしまった。
「人違いかも?だよね?」
ぴこん♪
『そんなことより神田さんは?』
あー、本来の目的を忘れてた。
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