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告白…藍子目線
【ゆらぎ】で集まって献杯してから数日後。
少し距離があったメンバーたちが、それぞれまた連絡を取り合い始めた。
「あれから考えたんだ、私」
髪を耳にかける仕草の楓。
「何を考えたの?」
アイスコーヒーの氷をカリコリ口に含みながら答えるのは藍子。
ここは昼下がりの【春爛漫】。
口数の少ないマスターは、少し離れたところで何かの機械を直してるようだった。
「これからの人生ってやつ、っていうか、今私がやり残したと思ってること」
「へぇ、何?興味津々なんだけど」
「このまえ、由実子にはちょっと話したんだけどね。私、好きな人がいるの。で、どうしたらいいのかなって相談。
バツイチで恋人多数の藍子なら、いい答えをくれるんじゃないかなって思ってさ」
「それでわざわざ呼び出してくれたわけ?」
「そう!ねぇ、どうしたらいい?私」
今日はカウンターじゃなくて、ふかふかのソファに座っている。
「占ってみたら?」
テーブルにあった占いマシーンを差し出す。
「ちょっと、真面目に聞いてよ」
むっとふくれる楓。
「じゃあ、真面目に聞くけど。楓はどうしたいわけ?
その好きな人とやらに告白して、あわよくば両思いなら旦那と離婚して、その人と結婚したいわけ?」
藍子の質問に、すぐに返事ができない。
「えー、離婚とかは無理!子どもと離れるのはイヤ。旦那は今日にでも捨てれるけどさ」
「で?」
「好きって言って、好きって言われたい!」
「はぁ?中学生の恋愛ごっこなの?」
「なんかそれ、由実子にも言われた気がするんだけど。とにかく、恋がしたいの、ってか恋してるの、今!」
「わかったから。じゃあ、伝えればいいんじゃない?それだけでいいのなら」
アイスコーヒーを一気に飲み干した。
「マスター、おかわりください!」
「わかりました。司ちょっとお客さんにアイスコーヒーをお願い!」
マスターが司と声をかけた方を見たら、いつからそこにいたのか、若い男の子がいた。
「え?あれ?いつからいたのあの子。ってかさぁ、めちゃくちゃ美形なんですけど」
楓が見つめる方をつられて見る。
➖うわ…栗色の柔らかそうな髪、大きなピアス、すべすべの肌。そこらのアイドルよりずっといい!➖
「どうぞ」
アイスコーヒーが運ばれてきた。
ぶっきらぼうな感じは若いからか。
それにしても。
「楓!どう見ても私らから見たら息子くらいの年齢だから」
「分かってます!ちょっと目の保養をしただけです!」
「で、その好きな人ってどこの誰?独身なの?もしかして妻帯者?」
「子どもが昔通ってた塾の先生なの。この前偶然ショッピングモールで会ってね、私のことをおぼえててくれて、一緒にスタバでコーヒー飲んでお話ししたの」
「それから?」
「えー、それだけ」
「LINEの交換とか?」
「してないしてない」
「じゃあ、どうやって告白するの?」
「だからそれを藍子に相談してるの」
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