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「…えっと、あの、寒くなってきましたね」
➖とんでもないことを口にしてしまった➖
焦るあまりまた、おかしなことを言ってるし。
ホントは寒くなんかない、おかしな汗が出てるし顔から火を噴くとはこのことだと思った。
➖私はいったい何才なんだよっ!➖
恥ずかし過ぎて入れる穴はないか、探してしまった。
「楓さん?」
「あ、あの、なんでもないので気にしないで、えっと、そうだ、LINEね、LINE」
スマホのLINEを開いて、QRコードを読み取る手が震える。
ぴろりん♪
「登録できました、よかった」
そう言って顔を上げたらそこに、顔があった神田の。
「⁉︎」
触れた、唇。
➖しまった、目を閉じるのを忘れてた!➖
いやそうじゃなくて。
ガバッと離された。
「こんにちは!」
階段下から生徒たちの声が聞こえてきた。
「あ、あの私、帰ります、ごめんなさい、突然!」
慌てて事務室を出る、けどこのまま帰ると生徒たちと出くわしてしまう。
急いで3階へ上がる。
➖え?なんだろ、いまの、え?kissした?➖
さっきまでとは違う心臓の鼓動を感じた。
ドキドキドキドキドキドキ。
止まらない。
深呼吸しないと、過呼吸になりそうだ。
階下で声がする。
そろそろ塾が始まる時間だろうか。
いくらか落ち着いたところで、LINEを開いてグループにLINEする。
「当たりだった、神田さんだった。ありがとう由実子!」
ぴこん♪
『よかった!ちゃんと連絡先交換した?』
「うん、LINEの交換ができた。でもそれだけしかできなくて時間なくて」
ぴこん♪
『そっか。でもLINEができれば告白もできるね!』
思わず大好きだと言ってしまったこと、kissされたことは報告できなかった。
ましてやグループLINEでは。
ぴこん♪
『やったじゃん!じゃあ、もう告白の相談はしなくてもいいね』
よかったスタンプとともにコメントしてきたのは藍子。
「うん、LINEから始めてみるよ、なんかドキドキとワクワクがいっぱいだよ!こんなの何年ぶりだろ?」
ぴこん♪
『おめでとうスタンプ』
ぴこん♪
『ラブスタンプ』
藍子と由実子からのLINE。
返信LINEを打つ手も震えている。
まさか私が今日、こんなことになったなんて誰も思わない。
自分でも信じられない。
キンコーン♪
授業開始の合図が鳴った。
スマホで時間を確認する。
➖もう帰らないと➖
近頃、メタボを気にする旦那の食事を考えないといけない時間だ。
冷蔵庫の在庫を思い返す。
➖今日は野菜メインのスープにしよう➖
どうせ何を作っても、美味しいと言われることはないのだけど、今夜の晩ごはんは優しい味になりそうな気がした。
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