28人が本棚に入れています
本棚に追加
『はい』
想像していたご婦人とは違う、しゃがれたハスキーな声が返って来た。僕は一瞬、あれ?と思いつつ、部屋番号が間違ってないことを確認して話しだした。
『こんにちは。ヒビキ探偵事務所の使いで来ました』
『お入り』
間髪いれずに返事が返って来たかと思うと、エレベーターホールへのドアが解錠する音がした。その自動ドアを通り抜けエレベーターに乗った。
推測通り、二十二階が最上階であった。三階より上に住んだことがない僕は、二十二階に住む生活がどんなものか想像し難かった。
エレベーターは三基あった。それでも朝の通学、通勤は混むのではないか? ちょっと外に、と思っても出るまでに五分はかかりそうだ。早めに家を出なくてはいけないな。エレベーターで他の住人と会ったらあいさつをするものなのか。今の時代、無闇には話さないようにするのだろうか。
エレベーターを降りると番号は二つだけ。この階には二部屋しかないのだ。依頼主の部屋のインターフォンを押す。
ガチャとカギが開いた音がしたが誰も出てこない。入って良いのか迷ったが車椅子の人かもしれないとも思い、開けてみた。
『失礼します。こんにちは。ぎゃっつ!』
開けた途端、目の前には、仁王立ちの背の高いおばあさんが般若の形相で立っていた。
『遅い!茶が冷める』
そう言って部屋の中に入って行った。おばあさんについて入ると大きなリビングがあり、豪華なテーブルセットの上にお茶のセットが置いてあった。
最初のコメントを投稿しよう!