1. 第一部 

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『はい』 想像していたご婦人とは違う、しゃがれたハスキーな声が返って来た。僕は一瞬、あれ?と思いつつ、部屋番号が間違ってないことを確認して話しだした。 『こんにちは。ヒビキ探偵事務所の使いで来ました』 『お入り』 間髪いれずに返事が返って来たかと思うと、エレベーターホールへのドアが解錠する音がした。その自動ドアを通り抜けエレベーターに乗った。 推測通り、二十二階が最上階であった。三階より上に住んだことがない僕は、二十二階に住む生活がどんなものか想像し難かった。 エレベーターは三基あった。それでも朝の通学、通勤は混むのではないか? ちょっと外に、と思っても出るまでに五分はかかりそうだ。早めに家を出なくてはいけないな。エレベーターで他の住人と会ったらあいさつをするものなのか。今の時代、無闇には話さないようにするのだろうか。 エレベーターを降りると番号は二つだけ。この階には二部屋しかないのだ。依頼主の部屋のインターフォンを押す。 ガチャとカギが開いた音がしたが誰も出てこない。入って良いのか迷ったが車椅子の人かもしれないとも思い、開けてみた。 『失礼します。こんにちは。ぎゃっつ!』 開けた途端、目の前には、仁王立ちの背の高いおばあさんが般若の形相で立っていた。 『遅い!茶が冷める』 そう言って部屋の中に入って行った。おばあさんについて入ると大きなリビングがあり、豪華なテーブルセットの上にお茶のセットが置いてあった。
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