1. 第一部 

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『早くお座り』 そう言って紅茶を入れてくれた。僕から受け取ったモンブランもティーカップとおそろいのお皿に乗せて目の前に置いた。三つ目はお仏壇に。 『早くお食べ』 おばあさんは自分も食べ始めた。ここまでくると何となく、依頼の内容が想像できた。僕は深呼吸して落ち着いた。 『いただきます』 ティーカップは白地に美しい花が描かれていた。そういえば、母もこういうカップを集めていたなと思い出し、じっと見つめていた。 『紅茶は嫌いかい?』 『いえ、すごく綺麗なカップだと思って』 『ウエッジウッドだよ』 『これ、木で出来てるの?』 『バカだね。ウエッジウッドっていうイギリスのティーカップメーカーだ』 呆れたような、でも楽しそうなおばあさんの様子にホッとし、会話とお茶を楽しんだ。 『久しぶりに楽しかったよ。お前は素直で面白い。また依頼するからお前が来るんだよ』 任務完了。たぶん成功だ。叔父さんに早く報告をしたくて急いで帰った。叔父さんは、まだ帰っていなかった。僕は、緊張で疲れていたようで、すぐに寝てしまった。朝起きると叔父さんがキッチンにいた。 『グッジョブ』 僕を見るなりそう言ってくれた。おばあさんから連絡が来たらしい。褒められてたまらなく嬉かった。
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