1. 第一部 

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「リカは?」 「ごめんなさい。マネージャーが迎えに来てるから」 「もー、いっつもそうだよねー。リカちゃん付き合い悪いー」 「でもシンさん来るんでしょ。嬉しいわ」 「えー、シズカさんってあーゆー系が好きなんですかー?」 「細マッチョでしょ。シルバーフレームの眼鏡で冷たそうな感じもイイし。かなり好みかも」 コンコンとメイク室の扉をノックする音が響く。 「どうぞ!」 こういう時、答えるのは年長者のシズカだ。  「失礼します。お疲れ様でした。リカ、帰りましょう」 僕こと、リカのマネージャーのシンが入ってきた。 シズカがいうように、背も高くて細身だが、意外とがっしりしていて、顔も整ったイケメンである。 二十六歳という年齢より若く見えるし、十五歳からしたら丁度憧れる対象となるのかもしれない。 「お疲れ様でした。お先に失礼します」 僕は、さっさとメイク室を出て、撮影スタジオの前に停められている黒のセダンに乗り込む。 この車は、フォルムがカッコいいと意見が一致し、僕の叔父さんが購入したものだ。 「あー、つっかれた!」 「おいおい、すぐにカツラを取るんじゃない。誰に盗撮されているかわからないだろ」 「えー、だって蒸れちゃってかゆいんだよ。フルスモークだし大丈夫でしょ」 「いいから、まだかぶってなさい」 「へいへい、まったく叔父さんは用心深いんだからー」 「用心深くなきゃ、この商売は成り立たない」 車を走らせながらも、周囲の様子を注意しているマネージャーのシンこと、深海響(しんかいひびき)が僕の叔父さんだ。 叔父さんは、探偵を副業にしている。
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