1. 第一部 

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 叔父さんは、郊外の信用金庫に勤めている。ご飯は主に手作りで、可能な限り僕と一緒に食べてくれる。取り立てて何を言うでもなく、淡々とした平凡な日常を僕に与えてくれるのだ。  大手銀行マンと違い、月給は決して多いとはいえなかった。家計的に手作りしか仕方なく、僕と住むことになってから料理を覚えたらしい。 しかし、この叔父さん、実はかなりのハイスペックの持ち主だ。 細マッチョが表すように、常に鍛えているし、足も速い。学生のころはバスケ部のキャプテンでインターハイに行っている。 車も大型免許やら、船舶免許、他、資格もゾロゾロ持っている。ここにきての料理は、研究熱心に独学で基本をマスターしている。自己流だが、安い食材でいかに栄養を取り美味しく作るかに長けている。   大学は、かなり良いところに受かり入学したのだが、なぜか中退している。そのあたりのことを僕は、父と母が話していた記憶があるが、小さかったため明確ではない。 いづれにしても高い能力を持っている。叔父さんの能力を考えたら、もっとそれに見合ったお給料をもらえる会社に行けるはずだと、不思議に思う。 そこは聞かないのが、暗黙の了解となっていて話題にはしない。 定時できっちり帰ってくる、普通というよりは比較的緩いサラリーマンの叔父さんが、副業で探偵をやっていると知ったのは一年くらい前であった。探偵と言っても、町の何でも屋さんみたいで、ペットの散歩とか粗大ゴミの処理とかまでやるらしい。
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