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所長との出会いは遡ること1年半前。
地方出身者の私は大学時代安アパートの1階角部屋に住んでいた。
最初は気のせい? とも思っていたけれど、さすがに下着ばかり3枚連続で無くなったら誰だっておかしいことに気づく。
警察に相談した、だけど犯人は捕まらない。
警察だって暇じゃないから見回りだって時々だ。
下着の外干しは辞めたのだけれど、数日後の夜ベランダに人影を見た。
鍵がかかっているから侵入してくることはできず、何度か窓をガタガタさせてから消えたけれど、恐怖で朝まで震えが止まらなくて眠れなかった。
その日、私はネットで調べた、格安の探偵事務所を。
格安、分割もお受けします、というイケメンが微笑む広告『工藤探偵事務所』
「助けて、下さい……、お願い、助けて……」
藁にも縋る思いで電話をした。
「すぐお伺いします、待っててください、大丈夫ですよ」
大丈夫です、大丈夫ですから落ち着いて。
電話口のその声の主の低く優しい声に涙が止まらなかったっけ。
とてもあの時の所長と今の所長が同一人物だなんて思えないわ。
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