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◇◇◇
「盗まれたのは下着が三枚、犯人らしき人影を見たのが昨夜ですね?」
工藤探偵事務所所長 北条健吾さんは、電話をかけてから1時間もしないうちに駆けつけてくれた。
あの写真通りにかっこいい人、少し年はとっているけれどタレ目の優しそうな笑顔にホッとした。
「捕まえましょうか」
「はい?」
「捕まえちゃいましょう! 女性の敵は野放しにはできません」
電話の通り、大丈夫、という優しい声と笑顔に私は委ねた。
その夜一枚だけ下着を干した、絶対に犯人が現れるからと。
ただ肝心の北条さんと連絡がつかない、電話をしても電源が入っていない様子。
大丈夫なんだろうか?
心配になって外の様子を伺おうとベランダを開けた瞬間、そこに立つ男と目がバッチリ合ってしまった。
ニヤリと笑った男にマズイ!と必死にベランダを閉めようとする私。
その一瞬前にベランダの隙間に足を入れた犯人は必死に開けようとしている。
力はどうしたって男の人に敵わない。
もうダメかもと思った瞬間。
「っ、きゅ、ヴェエエエ」
首を絞められた鳥が鳴くような声が聞こえた後、ドサッと大きな音を立てて何かが倒れた。
一瞬の静けさの後で、コンコンと窓が鳴り。
「もう大丈夫ですよ、犯人確保しましたから」
北条さんだ!!
窓を開けたらそこには口から泡を吹き完全に気を失っているさっきの男とそれを縄でぐるぐる巻きにしている北条さん。
「大丈夫ですか?」
泣き顔の私を見て心配そうに手を伸ばしてくれたから。
私はベランダから北条さんの胸をめがけて飛び込んだ。
「遅くなってすみません、怖い思いさせちゃってすみません」
もう大丈夫ですよ、と私を落ち着かせるように抱きしめてくれたのだ。
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