67人が本棚に入れています
本棚に追加
静香さんの夫、博さんが秘書を伴ってバーに現れたのは私たちが入店した10分後。
今夜ここに二人が現れると教えてくれたのは静香さんだ。
商談の後にきっと二人は現れるから、と。
「どう思う? 櫻子ちゃん」
「どうって何がです?」
「あの二人の関係」
横目で二人を観察、女性時折艶っぽい目で博さんを見上げボディタッチをしているけれど。
博さんは上手くそれをかわしているようにも見える。
ただスキャンダルを避けるため人前ではそっけない態度を取る人もいるわけだ。
彼の場合はどっちだろうか。
1時間ほど後彼女がバッグからルームキーを取り出し、スッとテーブルを滑らせて彼の前へと置く。
高性能の録音機能付き集音機を北条さんはできるだけ彼らへと近づけた。
微笑んだ博さんは支払いを済ませ彼女より先に店を出ていく。
「櫻子ちゃん、オレはご主人の後を追う。櫻子ちゃんは彼女の方よろしく」
「了解です」
ご主人の後を追い出て行った所長、その少し後で彼女もまた店を出ていく。
受け付けロビーでルームキーを返し、ホテルを出てタクシーに乗り込む彼女。
慌てて私も次に来たタクシーでその後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!