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私からあなたへ
クリスマスソングが流れる商店街をひとり歩く。和代と遥佳が喜びそうなクリスマスプレゼントを探していた。
ふたりからもらった笑顔だと思った。だから、ふたりの笑顔が見られるようなプレゼントがいい。なにがいいか探し求めた。
「ただいま」玄関のドアを開ける。
リビングに入ると、和代と遥佳は帰っており、豪華な料理でテーブルを飾り、私の帰りを待っていた。プレゼント選びに時間がかかり、遅くなったのだ。
「クリスマスプレゼントなんだけど……」
私はもじもじと切り出す。
「いいのよ。気にしないで」
「そうよ。パパはパパらしく、いつもみたく酔っ払って寝たらいいの」
ふたりはわかっていた。私にプレゼントを選ぶセンスなどない。ふたりが喜ぶようなものがわからなかったのだ。
「こうして一緒にごはんを食べられるだけでいいじゃない。幸せよ」
和代が意味ありげに私を見て笑った。
「そうだな」
私も笑顔で応えた。
一緒に食卓を囲む家族がいる。それだけで幸せなんだ。
和代の想いが詰まったマスクだった。
心配をかけた和代に、感謝の気持ちを伝えたい。
「よし、俺からふたりへクリスマスソングを贈ろう!」
和代も遥佳も驚いたように目を瞬かせたあと、声をあげて笑った。
「どうしたの? 急に」「パパ壊れた?」
私も笑いながら、目頭が熱くなる。
感謝しているんだ。ありがとう。
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