〜憧れ・あなただけを見つめる〜

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

〜憧れ・あなただけを見つめる〜

一目惚れ、なんてありえないと思っていた。その人の中身も知らずに好きになることなんてないって。 だけどあの日、私はあなたの笑顔に恋をしたんだ。 年に何度かある大会や練習試合。同じスポーツをしているあなたと会えるのはそんな時だけだった。 いつも勝ち上がる強い人、最初のイメージはそれくらい。 ある時、試合を終えたあなたを見つけた。 初めてちゃんと見た君の顔は、向日葵のように明るく輝く素敵な笑顔だった。 私はその笑顔に惹きこまれた。 話すこともないまま引退の時を迎えた。 進学した私は、部活動をやるつもりもなかった。だから、笑顔が素敵なあなたに会うことはもう二度とない、そう思っていた。 入学後、初めての登校は、思ってたよりも緊張しなかった。自分のクラスを確認して教室に入った時、目を疑うような光景に私は心が高鳴った。そこには紛れもない、遠い存在だったあなたがいた。 帰宅しようと思った時だった。あなたが声をかけてくれた。 部活、もうやらないの? 話しかけられたことよりも、私の存在を知っていたことに驚いてしまった。 なんて返事をしたのかはよく覚えていない。 話しかけられた嬉しさが、その日の帰路を明るく照らしてくれたような気がした。 結局私は部活を続けることにした。あなたがいたからではない。純粋にその競技がすきだったからだ。しかし、入学先は強豪校だった。練習の質は高く、最初は練習についていくのがやっとだった。 そして一年がたった。 文系と理系に分かれるためのクラス替え。お互い文系なのは知っていた。けれど、クラス替えであなたと離れるかもしれないと思うと、少し悲しい自分がいた。 そんな私に、神様は微笑んでくれたのか。 貼りだされた新しいクラスの名簿には、私とあなたの名前があった。嬉しくて思わずガッツポーズをしてしまった。 それから私達は、関わっていく中で恋心が芽生えていった。部内恋愛という形をよく思わない人もいて、苦しい思いをしたこともあった。 それでも… あの頃、遠くから見つめていたあなたの笑顔は、今、私の隣で向日葵のように明るく輝いている。 他の人には見せない、あなたのとびきり優しい笑顔は彼女になった私だけの特権だ。 私はこれからも、あなたを見つめ、その度あなたに恋をする。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!