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夜、新しいキャラデザインをすずに送った。
そしてパソコンを再確認したタイミングで、出版社からまた催促のメールを受信した。
焦れた文面だった。今度こそラストチャンスだろう。
苦笑して読んでいると、スマホにメッセージ受信の通知があった。
すずだった。
『すごい! すごすぎます、大好きです』
『これで描いてください! お願いします!』
まさかの一発OK。
湧き上がる高揚感に手が震えた。
(……よかった)
自分でも驚くくらい、心底安堵しているのがわかる。
再生への一歩かもしれない。
手の震えが興奮に変わった。
きっと満面の笑みでラフ画を眺めてる彼女を思い浮かべた。
勇気、みたいなものが湧いてくる気がして、またメールを見る。
『繰り返しますが、本件は月乃の強い希望を汲み……』
気づく。ここにも、自分であってほしいと思っている相手がいることに。
そっと、メールの「返信」をクリックする。
(……これは、相当いいものを出さないと挽回できないだろうけど……)
『返信遅れてしまい大変申し訳ございません。当方で検討いたしましたが……』
でも、きっと大丈夫だ。
『……ぜひ、受注したく……』
プロ絵師として再出発できる予感がした、十月の下旬だった。
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