林檎がふたつ

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林檎がふたつ

 サクラは殺した。  何人もの自分を殺して食べた。  食べた。  食べた食べた食べた。  食べた。  食べた食べた。  食べて食べて食べて、飲みこんだ。  そして生きた。  肉の処理は専用の機械があった。  両親がツテでサクラに与えた。  サクラが欲したから。  クローンは林檎。  己に許そうともあくまで忌むべきモノ、食べ物。  サクラはなんの罪悪感もなく、肉を食べたいだけ処理した。  クローン達には自我も知能もない。  そう作られたから。  でもある日のことだった。  イレギュラーが一体。  居た。  機械の操作上、必要なため確認したクローンが叫んだ。  殺さないで!  自我なぞ知能なぞないはずなのに、言葉を知っていたことからして不思議に、唖のような声をクローンは発した。  泣きうったえるのを、サクラはひるむことなく処理した。  その肉はいつもどおりおいしかった。  なんで私のクローンはこんなにおいしいの?  そうだ、私が綺麗だから、そんな私から作られた物だから、おいしいのよ。  満足の息をついて、唇を拭い、いただきました、の手をあわせる。  しかしそれからおかしかった。  脳裏にちらつくようになったあのクローンの泣き顔。  顔。  あ、ああたぶん、そうだわ。  サクラは気づく。  たぶんあれが私の死に顔だ。  え、私死ぬの?  夢を見た。  襲ってくるクローン。  逃げるサクラ。  サクラは悪夢に名前をつけた。  サクラから生まれた林檎だから、智惠の実サック、と。  サクラはサックのちいさな骨を探しだし、穴をあけて鎖をとおし首からさげた。  太らないためのお守りだった。  しかし。  サックの死亡、悪夢、それは最悪の形で現実にあらわれた。  クローンを食べるようになってから、林檎だけを食べるよりサクラは、太った。  なんで?  なんでよ!?  大丈夫な物しか食べてないのになんで太るの?!  泣き叫ぶサクラ。  これ以上何をしたら、と、混乱を極める両親。  サクラはいちおう、精神科にかかりつけの医者があった。  定期的に診察を受けていた。  しかし本当のことを相談できなかった。
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