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「ダイヤは磨かないと輝かないって言うよね。この車だって洗車しないで磨くのを怠れば、どんどん汚れて本来の輝きは失われていく。なゆちゃんも、努力や考え方次第で綺麗になれると思うよ」
私はハッとして彼の横顔を見つめた。
「なゆちゃんは、もっと変われる。内面も、外見もね」
こんなふうに言ってくれた人は初めてだった。
膝の上の手をぎゅっと握りしめた私は、胸の奥が温かくなっていくのを感じていた。
◇
まだ建って間もない様子の、高級感あふれる白いマンション。
地下の駐車場に車を停め、私は一馬さんの後ろについていきエレベーターで3階に上がった。
私はこれから、彼と同居している人に紹介されるらしい。
廊下の奥の重厚な扉を開け、「ただいま」と言いながら一馬さんが玄関へ入っていく。
すると「おかえり」と柔らかな声が響き、華奢な男の子が出迎えてくれた。
「なゆちゃん、俺の一番下の弟でハル。高校生なんだ」
一馬さんが振り返り、私へ紹介してくれる。
その男の子──弟さんは私の目を見て愛想よく微笑んでくれた。
「初めまして、春馬といいます」
「……深瀬奈雪です」
初めまして、と言うわりにはどこかで見たことがあるような。
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