2.偽装婚約

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「ダイヤは磨かないと輝かないって言うよね。この車だって洗車しないで磨くのを怠れば、どんどん汚れて本来の輝きは失われていく。なゆちゃんも、努力や考え方次第で綺麗になれると思うよ」  私はハッとして彼の横顔を見つめた。 「なゆちゃんは、もっと変われる。内面も、外見もね」  こんなふうに言ってくれた人は初めてだった。  膝の上の手をぎゅっと握りしめた私は、胸の奥が温かくなっていくのを感じていた。 ◇  まだ建って間もない様子の、高級感あふれる白いマンション。  地下の駐車場に車を停め、私は一馬さんの後ろについていきエレベーターで3階に上がった。  私はこれから、彼と同居している人に紹介されるらしい。  廊下の奥の重厚な扉を開け、「ただいま」と言いながら一馬さんが玄関へ入っていく。  すると「おかえり」と柔らかな声が響き、華奢な男の子が出迎えてくれた。 「なゆちゃん、俺の一番下の弟でハル。高校生なんだ」  一馬さんが振り返り、私へ紹介してくれる。  その男の子──弟さんは私の目を見て愛想よく微笑んでくれた。 「初めまして、春馬(はるま)といいます」 「……深瀬奈雪です」  初めまして、と言うわりにはどこかで見たことがあるような。
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