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1.結婚願望
ヒールが沈み込むほど、ふかふかした薔薇色のカーペット。
その上で微笑んでいるのは、グリム童話から抜け出してきたお姫様のような可憐な女の人だった。
難しく結い上げた髪の上には、宝石が散りばめられたティアラを乗せて。レースとフリルがふんだんにあしらわれた、淡いピンクの花びらを思わせるドレスをまとっている。
メイクは艶やかな透明感のある桜色のくちびると、長い付け睫毛が印象的。
遠目からもわかるほど隙がなく作り込まれ、ドレスとお揃いでピンク系にまとまっていた。
披露宴がお開きになったらしく、会場を出て行くゲストたちを新郎新婦が出口で見送っている。
笑顔で一人一人に挨拶する幸せそうなその姿を、ロビーの柱の影から遠巻きに見つめ、私はうっとりとため息をついた。
私と結婚してくれる人なんていないかも。
マイナス思考にそう思いながらも。いつか素敵な人が現れて、愛のこもったプロポーズをされることを密かに夢見ている。
私も早く、お姫様みたいに華やかなドレスを着て、好きな人にエスコートされてみたい。
……なんて、彼氏すらできないのに、私にはまだまだ先の話だった。
あり得ない妄想にふけっていた私は、ふと本来の目的を思い出す。
──今夜このホテル内で、ある人を紹介してもらう。
自分の人生が変わってしまうかもしれない、一人の男の人。
うまくいけば、結婚という夢が近づく可能性がある。
どんな人だろう……。
それを思うと急に緊張してきた。
そろそろ約束の時間のはずだと思い、スマホで時刻を確認しようとバッグの中をあさっていた、そのとき。
一緒に中に入れていた、口紅代わりのリップクリームが、何かの拍子で外に飛び出し、床に転がっていってしまった。
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