2.偽装婚約

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 放心状態になりながら、私はベッドに寝転んだ。  拓馬さんが叶多さんと同級生なら、25歳。  長男の一馬さんは、弟と4つ離れていると言っていたから、29歳だ。  私とは6つも離れていることになる。  思い返してみれば、一馬さんは叶多さんの話題になると、なんだか歯切れが悪かった気がする。  まさか拓馬さんは、紹介してもらうのが面倒になって、兄の一馬さんを代わりに出席させたとか?  もしも、紹介してもらう相手がそのまま拓馬さんだったら、今とは違う未来になってたのかな。  でもあの性格だから、連絡先も交換せずに、一度会ったきりで終わりそう。  だとしたら、あの日出会ったのは一馬さんでよかったのかもしれない。  私はちょっとした未練を胸の奥に閉じ込め、明日着ていく服を選ぶことにした。
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