3.開けてはいけない扉

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「なゆさんは、僕が中学のときに交通事故で死んだ母さんに似てるから」 「……そうなの?」  お母さんが亡くなっていたなんて、知らなかった。  一馬さんからも全く聞いていない。  ハルくんはただ、お母さんのことを思い出して、懐かしんで抱きついてきただけなんだね。  男女としての行為かと、一瞬でも疑った自分が恥ずかしい。  すっかり感情移入してしまった私は、されるがままにハルくんに抱きしめられた。 「辛いこと、思い出させてごめんね」  背中に回された腕に力がこもる。  だから私も彼の体へ手を伸ばし、そっと背中を撫でてあげた。  まだ子どもなのにお母さんを亡くし、こんな私をお母さんの面影と重ね、抱きついてきた彼。  可愛くて、可哀想で。  この子が望むことなら何でもしてあげたい。そう思った。 「なゆさんて、本当にいい匂いだね。こうしてると安心する。寂しいのも忘れられるよ」 「ハルくん……私にできることなら、何でも言ってね」  母性本能をくすぐられた私は、ついつい大サービス発言をしてしまった。 「いいの?」  ハルくんは顔を上げ、目を輝かせて私を見る。
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