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「なゆさんは、僕が中学のときに交通事故で死んだ母さんに似てるから」
「……そうなの?」
お母さんが亡くなっていたなんて、知らなかった。
一馬さんからも全く聞いていない。
ハルくんはただ、お母さんのことを思い出して、懐かしんで抱きついてきただけなんだね。
男女としての行為かと、一瞬でも疑った自分が恥ずかしい。
すっかり感情移入してしまった私は、されるがままにハルくんに抱きしめられた。
「辛いこと、思い出させてごめんね」
背中に回された腕に力がこもる。
だから私も彼の体へ手を伸ばし、そっと背中を撫でてあげた。
まだ子どもなのにお母さんを亡くし、こんな私をお母さんの面影と重ね、抱きついてきた彼。
可愛くて、可哀想で。
この子が望むことなら何でもしてあげたい。そう思った。
「なゆさんて、本当にいい匂いだね。こうしてると安心する。寂しいのも忘れられるよ」
「ハルくん……私にできることなら、何でも言ってね」
母性本能をくすぐられた私は、ついつい大サービス発言をしてしまった。
「いいの?」
ハルくんは顔を上げ、目を輝かせて私を見る。
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