1.結婚願望

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「ダメってことは……ないですけど」 「ほんと? ありがとう助かるよ!」  私の返事にかぶせ気味でお礼を言った一馬さんは、目を輝かせた。  その勢いに若干引きながらも、叶多(かなた)さんの紹介だから、きっと大丈夫だと信じることにする。  少しの期間とはいえ、お試しで婚約者というものを体験できるなら、こんなにお得なことはないのでは?  一目惚れした彼には未練が残るけど、二度と会うことはないだろうし。  私は軽い気持ちで一馬さんの頼みを引き受けることにした。 「3日後の夜、また会って欲しい。そのときに詳しく説明するよ」 「はい。私で良ければ。よろしくお願いします」  お互い軽く頭を下げ、契約が結ばれる。 「なんだったら、ずっと婚約者のフリを続けてくれても構わないよ」 「え……?」  私は首を傾げ、一馬さんを見つめ返す。  それは、どういうことだろう。 「まだ会ったばかりだけど。俺、なゆちゃんのこと気に入ったから。俺のところに永久就職っていう手もあるよね」 「あ……、はい」  私は半信半疑になりながらも、彼の真っ直ぐな瞳に吸い寄せられ、深く考えずに頷いていた。  もしも、取り柄のない私を好きになってくれたとしたら。  一馬さんみたいな優しそうな人となら、本気で結婚を考えてもいいかもしれない。  こんなチャンスは滅多にないはずだから。
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