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◇
一馬さんと連絡先を交換したあと、私たちはロビーで別れた。
ホテルを出れば、外はすでに闇が落ちている。
上着を持ってきていなかったので、ひんやりと肌寒い。
タクシーで帰るか地下鉄で帰るか迷っていると──
円柱にもたれるようにして立っている、すらりとした体形の男の人が目に入った。
その人は、さっき出会った一目惚れの彼のように見えて……
ドクン、と心臓が軽く飛び跳ねる。
まさか、運命の再会!?
けれど──何気なくこちらを振り返ったその顔は、若干雰囲気は似ていたものの、一目惚れの彼をだいぶ幼くした感じだった。
体つきが細身で、まだ未成年だと思われる。
髪の色は黒ではなく明るいブラウンだったし、スーツではなく白い薄手のジャケットにジーンズを合わせたカジュアルな格好だった。
がっかりした表情を隠さず彼の容姿をちらちら観察していると、すぐに気づかれたようで。
私と目が合い、ふわっと可愛らしく微笑まれた。
ホテルの従業員でもないのに、見知らぬ女へ、微笑みのサービス。
こんな愛想のいい男の子、自分の弟だったら絶対癒されるに違いない。
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