10 そういうことになりました

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「な、何を根拠に…」 「だって最近、莉乃を預けること多くなったし。帰り遅いし。それに…痕、ついてるよ。項に」 「えっ」 とっさに襟足に手を伸ばす。紬は姉のそんな慌てた態度に、勝ち誇ったように笑った。 「うわ、こんな初歩的なのに引っかかるんだ。おねえ、やば」 「……」 確かに。そもそも、廣川は澪の身体に痕を残すようなことはしない。きっと、家で莉乃の目に触れることを避けるためだろう。一応、あんなでも、教育者なのだ。 まあでも、この先もきっと紬の協力は必要になる。カマを掛けられて、白状せざるを得なくなったのは悔しいが、話しておいた方がいいだろう。 「…うん、まあ…あんたの言う通り」 仕方がない。澪は項に手を添えたまま、紬の指摘を認めた。 可動式の椅子を、ぐぐっと前に詰めて、紬は身を乗り出して、詳細を聞いてくる。 「相手、誰? どんな人? 今度は大丈夫?」 「……」 今度は大丈夫かという問いに、紬の男運が悪い姉への、同情不と安が表れている。 「多分…大丈夫…」 「ホントかなあ。おねえはさ、絶対その人だけはやめた方がいい、って周りが思う相手を好きになるから」
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