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第5話
ナインフォードお嬢様と共に旅に出た世界は、何と広い事か。
過去、百メートルにも満たなかった我らの世界、通りかかった旅人や商人がたまに来るだけの村がいかに小さな場所だったか、我らはこの度で思い知る事になった。
別に卑下し貶めて、己の住んでいた世界を否定しているわけではない。
ただただ想像より世界は果てしなく広く、雄大であっただけ。
我らはそんな事実をかみしめていたのだ。
澄み切った空の高さ、どこまでも果てしなく広がる草原、溢れんばかりの花がしきつめられた花畑。一生かかっても消費しきれぬだろう膨大な水を流す滝に、水平線の果てまで水満たす海。
何もかもが、広かった。
勇者に復讐するという目的で始めた旅であったが、その道のりの中で我らは悟っていた。
この世界に生きとし生きる生命は、己よりもはるかに大きなものに……運命に、偶然に、奇跡に生かされているのだと。
……傍若無人にみえた勇者ですら、世界にとってはひどくちっぽけな存在なのだと。
それに気づいてしまえば、復讐だ何だと言っているこの身をひどく小さく感じるようになった。
相手の不幸を追い求めるより、故郷に残して来た者達と共に憎しみと悲しみを乗り越え、新たな幸福を築くべきだったのかもしれない。
身の回りにある幸せに目を向け、失われたものばかりではなく残されたものにも目を向けるだったのかもしれない。
我らは旅の最中でそんな思いにさいなまれた。
我らが復讐を遂げるという事は、すなわち正式に国に認められた者を虐げるという事であり、お嬢様に迷惑をかけるという事でもある。
家族同然であるお嬢様を苦しめる事は本意ではなかった。
我らはその事で、多いに頭を悩ませる事になった。
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