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かくなるうえは卑怯とそしられようと、背中を狙って連中に敵がいる事を認識させようか、我らはそんな事を考えるまでとなっていたのだが……、
お嬢様がその場に伝説の生物、フェニックスを召喚して勇者達に啖呵を切ったのだった。
悠然とした姿で空をたゆたうその守護獣は、レベル80ほどになって酸素の薄い山岳地帯で三日三晩かけて仲間にした生物だ。
「私はこの伝説と謳われるフェニックスですらも仲間にしたテイマーです。ですが、貴方達なんかをやっつけるのは友達のコッココちゃんで十分です。貴方達が世界中の人々の、貴方達の馬鹿にするコッココに怖気づいて逃げたのだと思われたくないのなら、この勝負を受けてください」
その時我らは理解した
お嬢様の悔しそうな顔。
悲しそうな顔を見て。
ああ、お嬢様は全て分かっておられたのだ。
我らが何の為にここまで努力してきたのか、どういう気持ちで勇者達の前に立ちはだかったのか。
そんな我らの意を組んで、言葉にできぬ我らの代わりに勇者に決闘を言い渡してくださったのだ。
辺境の村にいた、ただの娘だった少女。
しかし、ただの村娘だったその少女は、眩しほどに立派になられた。
その時我らは、彼女は我らの主人で良かったと、心の底からそう思った。
ここまでずっと勇者との戦いは、我らだけで相手をするつもりだった。
だが、お嬢様はどこまでも我らと対等だったのだ。
そうと知らなかった初めの頃から。
ナインフィードお嬢様は、この世界に見渡してこれ以上ない我らの同士である。
お嬢様とならどんな相手でも負ける気がしなかった。
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