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第1話
我らはコッココである。
たまに一部の者から親しみをこめてコッココちゃんと呼ばれたり、逆に見下げられてニワトリ野郎と呼ばれたりするが、コッココである。
我らコッココは鳥類でありながらも飛べない鳥の生命体だ。
レベルは1で、体力も貧弱。
この世界での立場は、かなり低い位置にあるだろう。
そんな状態の我らであるので、コッココに特殊技能はなし。
魔法を使うなんてもっての他である。
しかも、唯一ある羽をばたつかせても、そこらへんに生えている木に飛び乗るくらいしか活用できず、空を飛ぶ事は不可能だ。
だが、それでも我らは普通の日常を幸せに過ごしていたのだ。
特殊技能など必要なし、魔法なども同様。
飛べる距離など、木の枝に移るくらいで十分であった。
我らコッココはトキワ村という小さな村で、人の良い人間……アントワーヌ家のご主人様達に飼われ、日々卵を提供する日々を送っていた。
村は小さく、そこに住まう者達の気性も穏やか。
そこは取り立てて大変な物事が起こる事のない、平和な村であった。
あの勇者達が……。
魔王を倒す事をこの国の国王から請われ、多額の金銭をもらい受けて旅をしている連中が来るまでは。
なに?
国だの国王だの魔王だのという情報を、ただのニワトリ風情であるコッココが把握しているのか。
……だと?
把握しているとも。
いくら他の動物達から下等生物だと言われようとも、我らは愚鈍なだけの生き物ではない。
個性があり、違いがある。
大体の個体は、そこまで理解できないだろうが、頭脳の発達した個体も中にはいるのだ。
ああ。
そうとも、ここで語っている我らがその少数派のコッココである。
疑問は解消されたであろうか?
では、話を進めよう。
例によって魔王討伐の旅を進める勇者達が存在する事は離したな。
その彼等は、旅の途中で我らのご主人が住まうトキワ村へとやって来た。
だが村へとやって来た彼らは到底人々の希望を背負って行動するような連中には見えなかった。
なぜなら奴らが奴等は、我らの住まう村へ来るなり横暴な態度を取り、無銭飲食や暴力を繰り返したのだから。
勇者がこんな辺鄙な村へとやってきたと、喜びながら意気揚々と出て行った我らがご主人。
それが家に帰って来た時に見た、あの痛ましい表情との落差。
我らは一生忘れる事は無いだろう。
そうして、村で好き勝手なふるまいをした勇者は我らの住み家へもやってきた。
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