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「ん~……」
夫婦が目覚めて十五分後に目を覚ました聖花は、肌寒さから逃れるように布団にもぐる。
「いやいや。あんたいつまで寝るつもりやの。まだ冬休みとちゃうんやで?」
聖花の行動に対し、難儀な子やなぁとばかりにツッコミを入れる。
「ぇ?」
耳馴染みのある声が頭上から響き、聖花は飛び起きる。ベッドに腰掛けて料理雑誌をパラパラと見ていた響子と視線が合う。
「なんで?」
「いや、それはこっちの台詞やと思うんやけど」
聖花の反応に微苦笑を浮かべ、見ていた雑誌を片付ける。
「ぁ、そっか。せやせや」
意識がハッキリしてきた聖花は今までのことを走馬灯のように思い出す。
「ところで聖花」
「な、なに?」
「あんたコレどないしたん?」
と、ベッドサイドテーブルに立てかけていた木刀を手に取り、聖花に見せる。
「ぁ、ああ~これは――って、覚えてないん?」
「何を? あんたまだ寝ぼけてるん?」
その返答で全てを理解した聖花は慌てて、「ううん。なんでもない。間違えた。気にせんといて」と、言い訳を言いながら木刀を手に取る。
「気にせんといてってゆわれても……木刀持ってきて、人の布団に潜っとったやなんて――どう考えても可笑し過ぎると思うんやけど」
「それは~」
聖花は視線を泳がし、何かいい言い訳はないかと模索する。
「まぁええけど。おねしょせんくて良かったなぁ」
「え? なんでそうなるん⁉」
「それほど怖かったんやろ? まぁ、ええやん。愛莉ちゃんには秘密にしといたるから」
「……まぁ、せやね。そりゃまぁ、おおきに」
ここで余計なことを言わぬほうが利口だと、聖花は苦笑いしながらも、渋々響子の言葉を受け入れる。
「お父さんが朝ごはん作ってくれてるから皆で食べよう? うちは先にリビング言ってるさかい」
響子は穏やかな笑みを向け、スリッパの音をパタパタと響かせながらその場を後にした。
聖花はそんな響子の背中を穏やかな笑みを浮かべながら見つめた。
「……ほんまに、覚えてないんやね」
聖花はホッとしたような、だけどもどこか寂しいような複雑な気分を抱えながら、着替えを取りに行くため、自室へと戻る
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