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 片付けも一通り済み、私はしばらく滞在した地下室を見渡した。  ここへ下るための階段と部屋との境にある扉を玄関とするならば、玄関から廊下を通りその先に洋室と、その左手に和室がある形となっている。  洋室と廊下の床には明るい茶色のフローリングが敷かれており、天井は高い。洋室には廊下とは反対の壁に備え付けのテレビが置いてあり、その手前にテーブルとイス、ノートパソコンが置いてある。  キッチンは廊下からの入り口からすぐ右手に、申し訳程度に備えてある。和室には洋服ダンスと、押入れに敷布団がある。浴室やトイレは廊下から繋がっている。  形としては一般的な一人用マンションの一室に近い。窓があればそのままマンションである。居心地の良し悪しは特にないが、女王の住処としては不適切な気もしないでもない。  昔はもっと厳かな雰囲気の部屋だったらしい。祈りを捧げるための祭壇や、火をくべるための場所があったようだが、今となっては廃れてしまったようで、有難味も何もない部屋となってしまった。胡散臭さの塊のような仕事である。  お茶でも飲んで休憩するか、そう思いキッチンに向かおうとした矢先、スマートフォンが着信を知らせてきた。発信先を確認しようとスマートフォンの画面を見ると、「王」とある。  この古くから続くお役目を管理している役職の人だった。見た目は温厚な熊のような、眼鏡をかけたおじさん。女王も嫌だけどこの肩書きも嫌だな、と思いながら電話に出た。  「ああ、雪城くん?すまないね、休みの日に」王様はせわしなく私を労わってきた。  「いえ。おつかれさまです。どうされたのですか?」  「君の方から桜井君に連絡着くかな?」  どういうことだ。私は眉をひそめた。どうしてこんな連絡が私に来るのか。  「小春と連絡が取れないのですか?」  「実はそうなんだ」王様は取り繕う様子もない。  「ほら、もうすぐ立春だろ?彼女も準備してるだろうけど、一応確認しとこうと思ってね。それで連絡したんだけど繋がんなくてさ」  着拒されてるのかな、などと笑いながら話してくる。  愛想笑いをしながら、「では、一応私の方からも連絡入れてみます」と了解する。  「悪いね。連絡着いたら私にも掛けるように言っといてくれる?」そう言って王様は電話を切った。
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