はじまり

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 入学式は退屈だった。毎度のことだが、大人たちはつまらない式典が好きだなあと思う。お偉いさんを呼んで、つまらない講釈を垂れる。まだ放送大学でも聞いていた方が有意義な時間なんじゃないかと思う。聞いたことないけど。       それと式中に隣の女の子がチラチラとこちらを見てきたけどなんだったんだろう。目があったときに軽くはにかんで見たけど普通に無視された。笑顔を返してくれたっていいじゃない。埼玉の女子高生は愛想がないなと思った。  式が終わった後は各教室に移動して配布物やら提出物やらのくだりをすませ解散となった。私の苗字は「朝倉」のため、いつもどおり出席番号は1番。教室入口付近の最前列の席になった。こればかりは私の姓を呪うしかない。席替えはいつだろうか。将来、生まれてくる子どものために結婚相手は「渡辺」あたりがいいかなと思う。  ためしにクラスの最後尾の渡辺君を見てみると育ちの悪い足利義満みたいな御尊顔をしていた。人を顔で判断するべきではないとわかってはいるがあれは無理。もちろん彼だって私なんかお断りだと思うかもしれないが生意気は金閣寺を建立してから言ってほしい。将軍でない足利義満なんて垂れ目の坊主でしかない。  
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